iPhone12以降で増えた“シリアル認証”の壁とは?〜「不明な部品」の理由を徹底解説〜

店長

こんにちは!埼玉県さいたま市浦和のiPhone修理専門店『iPhone修理のスマケア工房』店長です。ご覧いただきありがとうございます。
当店は「即日対応・データそのまま・安心品質」をモットーに、iPhoneのバッテリー交換や画面修理、水没復旧など幅広く対応しています。浦和駅から徒歩圏内でアクセスしやすく、地域の皆さまに信頼いただける修理サービスを目指しています。

今回のテーマ

本日のテーマは「iPhone12以降で増えたシリアル認証の壁とは?」です。
日々、さまざまな修理依頼をいただく中で、近年特に増えているのが「以前と同じように修理したのに一部の機能が使えなくなった」というご相談です。例えば、

サムネール
  • 画面を交換したら True Tone(トゥルートーン) が消えた
  • カメラ交換後に Face ID(フェイスID) が使えなくなった
  • バッテリー交換後に「サービス」という警告が出続ける

これらはいずれも、「iPhone12シリーズ以降」で導入が強化された “シリアル認証(パーツ認証)” という仕組みが関係しています。
今回はこの「認証の壁」の正体と、修理現場で実際にどのような影響が出ているのか、そしてユーザーとしてどう向き合うべきかを、できる限りわかりやすく解説します。

シリアル認証とは? 〜Appleの「部品紐づけ」システム〜

Apple製品は年々セキュリティ性を高めています。その一環として導入されたのが 「シリアル認証(Serial Pairing)」 です。
これは、各主要パーツに固有の識別番号(シリアルナンバー)を付与し、それをロジックボード(基板)上の管理データと紐づける仕組みのことです。つまり、

iPhone本体(基板)=その端末に最初に搭載されていた各パーツが“登録”されている状態

になっており、Apple純正の組み合わせ以外は非正規とみなされる設計なのです。
この仕組み自体はiPhone8の頃から部分的に導入されていましたが、iPhone12以降では対象範囲が一気に拡大しました。今では、ディスプレイ、バッテリー、カメラ、Face IDユニット、充電コネクターまで認証対象になっています。

なぜiPhone12以降で問題が顕在化したのか

iPhone12以降、Appleは修理やパーツ交換後に「認証再登録(リペアキャリブレーション)」を行わないと、一部機能が正常に動作しない仕様に変更しました。この再登録にはApple公式の診断ツールが必要で、非正規店には提供されていません。
そのため、非正規修理で

  • 画面を交換した → True Toneが消える
  • カメラユニットを交換した → Face IDが動作しない
  • バッテリーを交換した → バッテリー残量が正確に表示されない

といったトラブルが発生します。

Appleはこれを「安全性と品質の確保」「偽造部品の排除」という名目で説明していますが、現場の実感としては『純正以外を使わせないためのロック』に近い側面があります。

True Toneが消えるメカニズム

True Toneは周囲の光を感知して画面の色温度を自動で補正する機能です。この機能を制御しているセンサー情報は、ディスプレイパネルと基板の間で個別のID認証が行われています。
純正以外のディスプレイを取り付けた場合、または純正でも別の個体から取り外したパネルを使った場合、基板は「自分の登録データと一致しない」と判断し、True Toneを無効化してしまいます。
これがよくある「設定画面からTrue Tone項目が消える」現象の正体です。

対応策:データ移行による擬似復元

一部の非正規修理店では「True Toneデータ移行装置」を使って旧パネルの情報を新しいパネルに転送し、擬似的に復旧させることが可能です。当店でも一部の機種に対応したデータ移行装置を備えており、その機種においてはTrue Toneを復旧する対応を行なっております。
ただしこれは『非公式の暫定措置』であり、将来のiOSアップデートで再び無効化されるリスクがあります。

Face IDが使えなくなる理由

Face IDを支える「TrueDepthカメラユニット」は、赤外線プロジェクター・赤外線カメラ・近接センサーなど複数の極小パーツで構成されています。
このユニット全体が、一つのシリアル番号で基板とペアリングされています。

そのため、カメラレンズやセンサー部分だけを他の端末のものに交換しても、認証が通らず動作しなくなります。
このときiPhoneには「TrueDepthカメラで問題が検出されました。Face IDが無効になっています。」というエラーが表示され、システムレベルでFace ID機能がブロックされます。

Appleの診断ツールで再登録を行わない限り、いくら物理的に動作品を取り付けても復活はしないのです。

バッテリーの「サービス」表示の正体

iPhoneXS以降のバッテリーも同様にシリアル認証されています。
互換品だけでなく、純正品でも別の端末から取り外したバッテリーを装着した際でも「iPhoneはこのバッテリーを認識できません」という警告とともに「サービス」表示が出続けます。
バッテリー自体は正常に動作していても、システム上は『未承認パーツ』として扱われ、バッテリーの状態表示(最大容量など)が取得できなくなる仕様です。

但し、上記の仕様は最新のiOSにおいて緩和されており、最大容量表示などは復活しました。お困りの方はアップデートをおすすめします。

Appleの狙いと賛否両論

Appleがこのような認証強化を進める背景には、

  • セキュリティ保護(盗難端末の再利用防止)
  • 偽物・粗悪部品の排除
  • 品質保証とユーザー体験の統一化

という(メーカーとしての)正当な目的があります。

しかし、非正規修理の現場では別の課題も生まれています。それは「修理する権利(Right to Repair)」との衝突です。
海外では、ユーザー自身が端末を修理できる権利を主張する動きが活発化しており、アメリカではAppleが「セルフサービス修理プログラム」を開始するなどの変化が見られます。
日本でも、今後この流れが進むことが期待されています。

当店の方針

当店では、お客様に「リスクとメリットを正確に伝える」ことを最も大切にしています。非正規修理には確かに制限がありますが、すべてが“悪”というわけではありません。
たとえば、

  • Appleで「本体交換しかない」と言われた端末を復旧させデータを救出する修理
  • 正規修理が高額な場合のコストを抑えた修理
  • データを消去することなく必要な箇所だけを修理

これらはすべて、非正規修理だからこそ可能な選択肢です。

また、当店では修理後に「なぜこの現象が起きたのか」を丁寧に説明し、再発防止やデータ保護のアドバイスまで行っています。
「直す」だけではなく、「理解して使える」ことを目指した修理サービスを心がけています。

今後の展望:認証解除の可能性は?

現時点ではAppleの認証システムは非常に厳格で、非正規店が独自に「再登録」や「公式認証」を行うことはできません。
しかし、欧米では修理業界の透明化が進み、将来的には「正式な認証プログラムへの参加」や「認定部品の供給」が解放される可能性もあります。
その日まで、私たち修理店は正確な情報を伝え、お客様が正しい選択をできるようサポートし続けます。

まとめ

iPhone12以降のモデルでは、True ToneやFace IDなどの高機能がシリアル認証によって守られています。この仕組みはセキュリティ強化の反面、非正規修理に大きな制約をもたらしています。

しかし、修理は“選択”の時代です。

機能を取るか、コストを取るか、データを取るか。状況に応じて最適な方法を選ぶために、まずは信頼できる修理店に相談してみてください。
当店では、経験豊富なスタッフが丁寧に診断・説明・対応いたします。「これって直せる?」「何が原因?」と迷ったときは、ぜひお気軽にご相談ください。